空からの祈り ｂｙ 仁

　＜「終わったから、出ておいで」
　優しいあなたの声だけを待つ ＞・・・
　
　そして、あなたは私の身代わりになって、
　私を守るために、自分を殺し、
　耐えて、耐えて、耐え抜いて、
　いつも笑顔で、
　いつも優しく、
　大きなあいになっていく。
　もう、あなたにはかなわないや・・・

　あなたと一緒に、わたしも現実を生きて、
　あなたと一緒に、受け容れて、
　あなたと一緒に、乗り越えていけばよかった。
　けれどわたしは、自分の部屋に隠れていたから、
　怖くなるとわたしの部屋に逃げ込んでしまったから、
　あなたをうらやましく眺めていたわ。
　いつかあなたがわたしにもその力を与えてくれると願って・・・

　＜「もう、いいよ。出てきていいよ。」＞・・・

　もう、あの日は、とっくの昔に終わっているのだ。
　なのに、わたしは、あの日の中を生きている。
　あの日の中を生きているわたしを見てほしい。
　あの日の中を生きているわたしをもっと知ってほしい。
　けれど、あの日のわたしを知っているのは
　やっぱり、あなただけなんだ。
　あなたを通さないとわたしは見えなくなっているんだ・・・

　あなたが新しくなった世界を
　わたしも一緒に生きていきたいよ。
　あなたが愛されるように
　わたしも一緒に愛されたいよ。
　あなたはあの人にわたしを見せてくれたね。
　あの人はわたしをひとつひとつ見ようとしてくれるだろうか・・・

　わたしは、また、わたしの部屋に引きこもってしまう。
　でも、わたしももうあの日が終わったことを知ったから、
　わたしの部屋はいらなくなったよ。
　わたしはこの大空を一人で眺めているんだ。
そして、わたしはあなたを解き放つんだ。
　わたしはひとりでこの大空を翔ていくんだ。
　大空を翔ながら、あなたがあの人と幸せになるのを祈っていくよ。